推薦状(その五)

さて、推薦状についてはこれで最後です。今回はずばり「推薦状をどう書けばよいのか?」について。

まず断っておきますが、本来ならこれは学生が気にすべき問題ではありません。だって本人が書くもんじゃないし、推薦者が書いたものを見ることすら普通はできないからです。(推薦状は大抵の場合、推薦者が直接大学に送るようになっています。)

前にも書いたように「インパクトのある推薦状をちゃんと書けるような」指導教官を探すことから、留学の準備は始まっているのです。

しかし、そういう悠長なことは言ってられない切羽つまった人もいるわけで、最後の最後の手段である、

「自分で書いたものにサインをしてもらう」

とか

「下書きを作って教授に渡す」

とかに頼らないといけないかもしれません。はっきり断っておきますが、こういうのはもちろん論外です。

審査する側はそれだけ推薦状を重視するのです。テストのスコアが良くて、学校の成績が良くて、エッセイもいけている、そういう学生の書類を前にして教授陣がまず最初に言うことは、

"What do the letters say?" (推薦状には何と書いてあるのか?)

なのです。

でももしかしたら、自分の教え子が「留学したいんですけど推薦状を書いてもらえませんか?」と言ってきて困っている教授の人がこのサイトを読んでるかもしれません。うーん、この学生はとびきり優秀だから手放したくはないけど、この子の将来を考えると多分アメリカに行ったほうが伸びるんだろうなー。なんとか手助けしてやりたいものだ。とか思ってるかもしれない。

そういうお困りの教授のためにアメリカ流推薦状の書き方について手短かに説明をしたいと思います。(長々と書いている時間がないので失敬。)

まず当たり前のことですが、次の三要素が入っていないといけません。

1。自分はこの学生をどのくらい知っているか?(時間の「長さ」とつきあいの「深さ」の両方について書きます。)

2。この学生の能力はどの程度のものか?なぜそう思うのか?

3。この学生は志望校のプログラムでやっていけるだけの実力があるか?

この中で一番大切なのは2です。3は「よって、私はこの学生をあなたのプログラムに自信をもって推薦します。」といった感じの結び的な部分なので、どちらかと言うと形式的なものです。

推薦状の善し悪しは2がどのくらい具体的に書かれているか?で決まると言ってもよいでしょう。例えば

「彼女は素晴らしい才能を秘めた学生だと思う。」

では何のことかさっぱりわかりませんが、

「私はこれまで20年の研究生活の中でのべ46人の学部生と30人の大学院生の面倒を見てきたけれども、彼女はそのなかでも5本の指に確実に入る逸材である。」

だと少しは具体的です。でも推薦状というのは非常に personal なものなのです。あんまり形式ばらずに「いや、僕はホントこの学生はいいと思うよ。だって、例えばね、。。。」みたいなノリで個人的なエピソードのようなものを織り交ぜると説得力がでます。

「彼女は僕の指導のもとで、流体力学の数値計算プロジェクトをやったんだけど、彼女が基礎物理を実に深く理解していて、かつどんな些細なことも見逃さない注意深さも兼ね備えていることがよくわかった。僕が感心したことは幾つかあるんだけど、一番驚いたのは他人が書いたプログラムをそのまま使うのは嫌だといって、全部自分でゼロから書いたことだ。もちろんこれは「研究の効率」という視点でみればあまり賢明ではないかもれしれないが、彼女は「ゼロから書く事によってプログラムのすみからすみまで完璧に自分のものにできるし、物理ももっと深く理解できるようになると思う。このレベルの理解を得るためにはそれだけの時間を使う価値がある。」と主張して、実際彼女自身の新しいプログラムを書き上げたのだ。そしてその後の彼女の進歩は目覚ましいものがあった。彼女はそのプログラムをどんどん改良していき、これまでうちの研究室ではできなかったタイプの計算までできるようになったのである。。。。」

とまあ、こんな感じで熱く語ってもよいわけです。というかインパクトのある推薦状というのはみんなこんな感じです。具体的な話がないと相手に伝わりません。

また、そんなに学生のことを良く知らない人は、自分で知っている範囲で書けばよいのです。べたほめするだけが推薦状ではありません。しょーもない学生を持ち上げて、自分の評判に傷をつけることは避けたほうがよいでしょう。学生の質を見極める眼力がないと思われてしまいます。トップクラスの教授が書いた推薦状には手放しで持ち上げているものは少ないです。敢えてネガティブなことを書く必要はありませんが、

「褒めれるところだけ褒める」

方針で書いて下さい。嘘を書いてはいけないのです。当たり前ですが。

推薦状は決して形式的なものではありません。授業料と生活費を全額出してまで採用すべき学生かどうか、その判断をするときに決定的な役割を果たします。